妻の不満を理解できない夫 VS その不満を言語化できない妻+α(@クリーピー 偽りの隣人)

クリーピー 偽りの隣人

あなたは「今日どんな一日だった?」という家族の会話をちゃんとしていますか?

今回は、明らかに日常とはかけ離れた一日だったのに「なんでもない。」と答えてしまう夫婦を中心に描かれた作品を紹介します。

クリーピー 偽りの隣人【予告動画】

作品紹介

黒沢清監督。西島秀俊が主演。妻役は竹内結子。そのほか川口春奈、東出昌大、香川照之ら豪華キャストが集結。第15回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝いた前川裕の小説を映画化。

隣人に抱いた疑念をきっかけに、とある夫婦の平穏な日常が悪夢になっていく恐怖を描いた作品。

どんな人におススメ?

じぶんの住んでいる日常こそが、「普通」であり、「当たり前」であると信じている人にこそ見てほしい作品です。

もしかしたら「普通」だと思っていた隣人は「普通」ではなく、「ちょっと変」だと思っていた隣人が「普通」かもしれませんよ?

さらに「普通」だと思っていた夫婦関係も「普通」ではなく、「普通」だと思っていた「あなた」も普通じゃないかもしれませんよ?

モヤモヤした人間関係のなんともいえぬ気持ち悪さ、人間の複雑さを味わいたい方は是非、お楽しみください!

気ままな解説!

ココから先は、管理人の気ままな解説です。映画を観た後に、映画を振り返りながらみてください!

ネタバレ警報

ここから先はネタバレを大きく含みます。映画を視聴した後に閲覧することを強くおススメします!

不気味な隣人

竹内優子が演じる普通の主婦が、隣人に挨拶にいった時から異質なコミュニケーションが描かれ続けます。

例えば、竹内優子が「愛犬は躾けていますから大丈夫です。」と不気味な隣人(以下、香川照之)に伝えると、香川照之は「えー?犬って躾けるんですか?」と反応します。

多くの人が日常生活で経験したこともない香川照之のリアクションに笑ってしまったことでしょう。隣人はあきらかに「サイコパス」として描かれています。

しかし異常なのは、隣人だけではなかったのです。

壊れた夫婦関係

作品の前半は、なんとなくほのぼのとした夫婦関係が描かれているのですが、後半になるにつれて夫婦関係の破綻が少しずつ明らかになっていきます。

この作品を鑑賞した後になって、「なんだかモヤモヤするなぁ~」と思った方は多いと思いますが、そのモヤモヤの原因の一つは「夫婦関係の破綻」が直接的に描かれていないことなのです。

竹内優子は作中のなかでこういいます。「わたしは人生のいろいろなものを諦めた。引っ越せば、なんとかなると思ったけど。」と。

しかし夫である西島秀俊は、妻の異変にほどんど気づいていません。その証拠に、隣の隣人が明らかに異常な人物であることが発覚し、妻がボーっとしている(隣人にクスリを打たれていた)にも関わらず、「ちょっと外出してくる。すぐに帰ってくるからさ。」とセリフを残し、「妻を置いて外出する。」のです。

妻(竹内優子)の上っ面の表情だけでは決して夫婦関係の破綻がわからないところにも、この作品の意図が隠されているだと思います。

対外的に仲良しアピールをする夫婦には「仮面夫婦」という言葉がありますが、西島&竹内夫婦を形容するコトバはわたしの知る限りありません。

せっかくの機会ですから、「なんでもない夫婦」とでも名付けておきましょうか。

そうなんです。妻はさみしかったのです。その心のすき間に忍び込んだのが、異常な隣人である香川照之だったのです。

そして作品が終盤になるにつれて、もう一人のサイコパスがいることが発覚します。なんと主人公の西島秀俊もサイコパスだったのです。

もう一人のサイコパス

西島秀俊がサイコパスであることは、作品の序盤から匂わされていました。

まず冒頭のシーンで、犯罪者であるサイコパスと気心のしれた友人のように会話を楽しむ一方で「犯罪者を貴重なサンプル」だと断言しています。一見すると西島秀俊と犯罪者のどちらがサイコパスなのかわかりませんが、「警察の一部の人間ってそんなもんかな?」とスルーしてしまうでしょう。

また過去の事件(両親と兄が失踪)の辛い記憶を思い出している川口春奈に対して、「(殺人事件の捜査をするのは)趣味なんです。でも本気です!」と断言しちゃうところとか。

サイコパスである隣人香川照之と対決時に、言いたい放題攻撃した後になって、逆に香川照之から「こいつオカシイ」と捨て台詞を吐かれてしまう場面。

作品の後半になって思い返してみれば、西島秀俊さんのセルフや演技がすべて「感情の入っていない人形」のようだったことが、「モヤモヤ」のもう一つの正体であることが明らかになっていきます。

そして主人公がサイコパスだったことが確定的になるのは、作品終盤の隣人に拳銃を向けてしまう場面です。

周囲の人間を薬と催眠術(おそらく)でコントロールすることに長けていた香川照之のスキルが、同類(サイコパス)の西島秀俊には通用しなかったことが明らかになるのです。

最後に

この映画のラストシーンは、たくさんのことを語りかけてくれています。

そもそも最初から夫婦関係は破綻しており、異常な隣人から解放された後になっても夫婦関係が修復されるわけではないということが、竹内優子さんの演技(叫び声)から浮き彫りになります。

作品はこう語りかけているようのだと思います。

あなたは隣人のことを理解していますか?(もしかしたら犯罪者かもしれませんよ?)

あなたは家族のことを理解していますか?(もしかしたら既に夫婦関係は破綻しているかも?)

あなたは自分のことを理解していますか?(もしかしたらあなたこそがサイコパスかも!!!!!)

人間の怖さ、不気味さを思い知った作品でした。ありがとう!