安心・安全な生活は「カオス」の上に成り立っている(@ハイ・ライズ)

ハイ・ライズ

UBER EATSの配達中に、東京港区にある某高級マンションの住人(おそらく30代男性)に声をかけられて、こんな質問をされました。

コンビニの商品は配達してくれないんですか?」と。詳しく話をきくと「暑い日には一歩も外にでたくない」のだそうです。

わたしは「安心・安全・便利・快適」な世の中を目指す人間の欲はものすごいと思いましたが、さらに高級なタワーマンションの住人からは、まったく別の質問をされました。

「わたしもUBER EATSの仕事したいんだけど、時給はどれくらいですか?」と。

わたしは少し驚きましたが、話を聞けば「何か新しいことに挑戦したい。運動してお金がもらえるなんて面白そうな仕事じゃない?」とのことでした。

そうなんです。「安心・安全・便利・快適」というだけでは、必ずしも人間は幸せになれないのです。

それにも関わらず、階層の下にいる人間は「階層が下のわたしは不幸だ。階層が上になれば、わたしは幸せになれる。」と勘違いします。

その一方で階層が上の人間は「階層が上になったのに幸せじゃないが、階層が下になれば今より不幸になる。」と不安に駆られてポジションの椅子取りゲームに固執するのです。

階層という名の「権利」に固執すればするほど、幸せになるどころか不幸になるというパラドックスをどうすれば解消することができるのでしょうか?

今回は「わかりやすい答え」を提示してくれる映画を1つ紹介したいと思います。

ハイ・ライズ

あらすじ

ロンドン郊外の高層マンションに入居したラング(役:トム・ヒドルストン)は、上層階に行くにつれ住人が富裕層になっていき、フロアの高低に基づく階級間の摩擦の存在を知るのだが・・・・

見どころ(ネタバレあり)

主人公のラングは、典型的な日本人サラリーマンのようです。ラングは自らを完璧主義者と自称するように、マンションが停電したりトラブルに巻き込まれようとライフスタイルを変えようとしません。

ラングはいつもピシッとスーツを着こなし、規則正しく生活し、ジムでの運動だって欠かしません。さながらラングは、台風が直撃しているのに会社を休むことを許されず、電車に我先に乗り込もうとする日本のサラリーマンのようです。

ある日マンションが停電し、上層階の住民と、下層会の住民との軋轢がひどくなり、とても人間が住めるような環境ではなくなります。映画を鑑賞する誰もが「もうマンションから引っ越せばいいのに。なぜ?高級マンションに固執するんだ?」と疑問に思うはずです。

しかしラングを含めた住民のほとんどがマンションから引っ越そうとしません。「このマンションはおかしいよ!」と主張する唯一の人物は、逆にマンションの住民から「変人」というレッテルを張られてしまうのです。

少しずつマンションの秩序が壊れていくにつれ、幸せそうに生きる人と、不幸になる人が明確になっています。

不幸であり続ける人は「この世の中の秩序はすべて人間の知識でコントロールできる。」と妄信するタイプの人間です。

一方で幸福を感じることのできる人は「この世の理不尽やカオス(渾沌)をそっくりそのまま受け入れる。」と覚悟を決めた人間たちです。

あなたがどちらの生き方を選択するも自由ですが、決断を下すのは映画を鑑賞してからでも遅くはないでしょう。